亥の子餅とは、猪の子供「うり坊」を彷彿とさせる可愛らしい形をした秋のお菓子です。
その歴史は長く、平安時代に書かれた源氏物語にも登場します。
源氏物語の舞台である平安時代当時は大豆、小豆、大角豆(ささげ)、胡麻、栗、柿、糖(あめ)の七種の粉を入れて餅をついたとのこと。
むか新では古(いにしえ)の材料に思いをはせて黒糖風味の生地に栗、胡麻を入れ、十勝産小豆のつぶ餡を包んだ亥の子餅に仕上げました。秋の季節のお菓子として販売しております。

黒糖

栗

胡麻

小豆
今回は亥の子餅の製造風景を取材しました。
亥の子餅が出来上がる様子をお伝えします。


まずは黒糖蜜に栗を入れ、溶かします。
溶かしている間に餅生地も仕込んでいきます。
餅生地が蒸しあがると別の釜に移し、少しずつ先ほどの栗を入れた黒糖蜜を入れていきます。

最初から全部入れるのではなくしっかり混ざるよう、はじめは少しずつ、徐々に量を増やします。

生地が焦げて釜についてしまわないよう注意が必要です。
黒糖蜜を入れる人、練る人と分担してふたりがかりで行います。

全て混ぜ終えると、最後に黒ゴマを投入。

生地の仕込みはこれで終了。
その後、包餡されたものを手作業でうり坊の形に整形していきます。

ひとつひとつ両手で包んで、丁寧に、すばやく。


包餡したてと並べて見ると形の違いがはっきりします。
1匹、2匹…と整列させたら完成です。
古くから亥の子餅を亥の月・亥の日・亥の刻(現代の21時~23時)に食べると万病が治るという言い伝えがあります。亥の月は旧暦の十月のこと。現代の暦では十一月頃にあたります。
亥は子孫繁栄の象徴でもあるので、収穫祝いとして大豆や小豆、栗、胡麻などを混ぜ、五穀豊穣や無病息災を願います。
また、茶道では夏の間に使っていた「風炉」を閉じ、冬の期間に使う「炉」に初めて火を入れる
「炉開き」を旧暦の10月の最初の亥の日に行います。茶人にとって炉開きとは「茶人の正月」とも呼ばれるほど大事な日です。
これには、陰陽五行説で「水」の性質を持つ「亥」の日にはじめて火を入れることで、火災を避けるという意味が込められています。
似た理由で、こたつを出すのに縁起が良いとされている日も亥の月の亥の日だそうです。
江戸時代では、亥の月の最初の亥の日に武家がこたつなどの暖房器具を出し、庶民は少しでも節約する側面もあり、二番目の亥の日にこたつを出していたと言われています。
当時のこたつは木炭や木炭を加工した炭団(たどん)を使っており、木造建築であり火事も多く人々は日々火災と隣り合わせで暮らしていました。火の神を祀る愛宕神社の神の使いが猪であることから、火伏せのご利益があると考え、亥の日が火を使うこたつを出すのに最良の日と考えられたようです。
日ごと寒さが増し、冬を迎える準備の中で、こたつを使われるご家庭もあると思います。
亥の日にこたつを出し、むか新のお菓子とともに、冬の訪れを待つのはいかかでしょうか。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
黒糖風味の生地に栗、胡麻を入れ、十勝小豆の粒餡を包み、亥(猪)の子形に仕上げた季節の和菓子です。
亥の子餅
3個入/税込600